ボーナスを受け取ったあとに退職することを考えている人は少なくありません。しかし、「ボーナスをもらってすぐ辞めるのは非常識では?」と感じて、踏み出せない人も多いのではないでしょうか。
この記事では、「ボーナスをもらって辞めるのは非常識なのか?」という疑問に対して、法律・会社の仕組み・円満退職のコツまでをわかりやすく解説します。
ボーナスをもらって辞めるのは非常識なのか?
まずは、「ボーナスをもらってから退職する」ことがそもそも非常識にあたるのかどうかを整理してみましょう。結論から言えば、法律上は問題ありません。ただし、会社によっては注意すべきルールが存在します。
法律上は退職の自由があるから問題ではない
日本の労働基準法では、労働者には「退職の自由」が認められています。つまり、どのタイミングで退職しても法律的な罰則はありません。ボーナスをもらったあとに辞めることも、法的には自由なのです。
また、ボーナスはあくまで労働の成果に対する報酬であり、過去の勤務実績に対して支払われるものです。したがって、「ボーナスを受け取って辞めること=会社を裏切る行為」とは言えないのが実情です。
ただし「支給日在籍要件」がある会社もあるので確認が必要
多くの企業では、ボーナスを支給する際に「支給日現在、在籍している社員に支給する」といった条件を設けています。これを「支給日在籍要件」と呼びます。
この要件がある場合、たとえ査定期間中にしっかり働いていたとしても、ボーナス支給日に会社にいなければ受け取れないことになります。つまり、「支給日前に退職するとボーナスが出ない」ケースがあるのです。
そのため、退職を考える際は、会社の就業規則や人事制度を確認することが重要です。場合によっては、退職日を少し後ろ倒しにすることでボーナスを受け取れる可能性もあります。
「もらってすぐ辞めた」と思われると印象が悪くなるケースもある
法律的には問題がないとしても、会社や同僚の印象を悪くしてしまうことはあります。特に、支給直後に退職届を出すと、「ボーナスをもらって逃げた」と誤解されやすいのです。
こうした印象を避けるには、ボーナス支給後に少し期間をおいてから退職を申し出るのが賢明です。例えば、支給から2~3週間程度たってから退職の意思を伝えると、印象が柔らかくなります。
また、退職理由を前向きな内容にすることも大切です。「新しい環境でスキルを磨きたい」「キャリアアップを目指したい」といった説明であれば、ネガティブな印象を与えにくいでしょう。
会社側がボーナス支給後の退職を嫌がる理由
会社としても、ボーナスを支給した直後に社員が辞めてしまうと困る事情があります。ここでは、企業がボーナス後の退職を嫌がる主な理由を見ていきましょう。
支給直後に辞められると業務の引き継ぎが難しくなるから
ボーナス支給の時期は、多くの会社にとって半期の締めにあたります。この時期に辞める社員が出ると、引き継ぎ作業や業務調整が非常に難しくなります。
特に、プロジェクトを抱えている社員やチームの中核を担っている人が辞めると、残されたメンバーの負担が急増します。結果として、職場の雰囲気が悪化することも少なくありません。
「もらい逃げ」のように見られやすいから
ボーナス支給直後の退職は、どうしても「ボーナスだけもらって辞めた」という印象を与えてしまいます。これは決して本人に悪意がなくても、周囲の人がそう受け取ってしまうことがあるのです。
こうした印象を避けるためにも、退職理由の伝え方やタイミングが重要になります。「前から転職を考えていた」「業務の区切りを見て退職を決めた」など、筋の通った説明を添えることで、誤解を減らせます。
次年度の査定やチームへの影響を考えると会社として負担になるから
ボーナスは、単にその時点での成果だけでなく、次期の評価やチーム全体のモチベーションにも影響します。ボーナス支給直後に退職する社員が多いと、「次は自分も辞めようかな」と考える人が出る可能性もあり、組織の安定性を損ねてしまうのです。
また、次年度の予算や人員計画にも影響が及びます。ボーナスの支給は企業にとって大きな支出であり、その直後に人材が流出すると、経営的にも計算が狂ってしまうことがあります。
ボーナスをもらって辞めても問題ないケースとは?
ここまで読んで、「ではどんな場合なら問題なくボーナスをもらって辞められるのか?」と疑問に感じた人も多いはずです。ここからは、会社側とのトラブルにならずに退職できる具体的なケースを紹介します。
支給日在籍要件を満たしていてボーナスが確実に支給される場合
最も重要なのは、支給日に在籍しているかどうかです。たとえ退職の意思を伝えていても、ボーナス支給日まで正式に在籍していれば、通常はボーナスを受け取ることができます。
つまり、「退職を決めたからもうもらえない」ということではなく、支給日に在籍していれば受け取れるというルールが基本です。就業規則を確認して、この条件をしっかり理解しておくことが大切です。
ただし、一部の企業では「退職予定者はボーナスの支給対象外」としている場合もあるため、退職願を出すタイミングには注意しましょう。ボーナスの支給処理が終わるまでは、できるだけ静かにしておくのが賢明です。
後任への引き継ぎがきちんと行えるスケジュールを確保できている場合
「もらい逃げ」と思われないためには、誠実な引き継ぎ対応が欠かせません。後任への引き継ぎ期間をしっかり確保し、マニュアルや手順書を整えておくことで、周囲の印象が大きく変わります。
例えば、「ボーナス支給後に1ヶ月間は在籍し、引き継ぎに専念する」といった形にすれば、上司や同僚にも納得してもらいやすくなるでしょう。こうした誠意ある行動は、退職後の人間関係や転職先での評価にも良い影響を与えます。
転職先が決まっていて収入ブランクを作らず次につなげられる時
次の職場が決まっている場合、経済的な不安が少なく安心して退職できます。ボーナスをもらってから転職先へスムーズに移行できると、生活のブランクが生じにくく、計画的なキャリアチェンジが可能です。
また、転職先の入社時期とボーナス支給時期をうまく調整すれば、前職の成果報酬を受け取りつつ、次のステップへ移れる理想的な形になります。これは決して「ずるい」行為ではなく、賢く働くための戦略と言えるでしょう。
退職のタイミングを決める際のポイント
「ボーナスをもらって辞める」といっても、タイミングを間違えるとトラブルになることがあります。ここでは、退職時期を決めるときに押さえておくべき3つのポイントを解説します。
自社のボーナス支給日や査定対象期間を確認する
まず確認すべきは、会社のボーナス支給日と査定期間です。多くの企業では、「前年の下半期の成果」が翌年の夏のボーナスに反映されるように、支給と査定の間に時差があります。
そのため、査定期間中にすでに退職が決まっていると、評価が低くなってしまうケースもあります。ボーナスの基準を理解したうえで、退職のタイミングを慎重に計画することが大切です。
転職先の入社日や準備期間を考慮する
転職活動が順調に進むと、つい「早く次に行きたい」という気持ちになります。しかし、焦って辞めてしまうと、ボーナスの支給条件を満たせない可能性があります。
理想的なのは、転職先と入社時期の調整を行い、ボーナスをもらったうえでスムーズに次の職場へ移ることです。人事担当者に事情を説明すれば、数週間程度の調整を認めてくれるケースも少なくありません。
引き継ぎに必要な時間を逆算して余裕をもたせる
引き継ぎは、退職を円満に終えるための最も大事なプロセスです。たとえば、あなたが担当していた業務の全体像を整理し、関係者への共有スケジュールを作ることで、混乱を防げます。
退職を伝える時点で「○月末までに引き継ぎを完了させます」と明確に伝えておくと、上司も安心しやすいでしょう。逆に、準備不足のまま退職を急ぐと、「無責任だ」と思われてしまうリスクもあります。
ボーナス後に辞めるときの伝え方と注意点
ボーナスを受け取ってから退職する場合、どのように上司へ伝えるかが印象を大きく左右します。ここでは、退職の意思表示を行う際のコツと注意点を具体的に見ていきましょう。
退職の意思を伝えるタイミングは“支給後少し間をあけて”が好ましい
ボーナス支給直後に「辞めます」と伝えると、どうしても「お金をもらってすぐ辞めた」と思われやすくなります。そのため、支給から1〜2週間ほど間をあけて退職の意思を伝えるのが無難です。
また、退職日を伝える際は、「業務の区切りがつく○月末で退職したい」といった具体的な説明を添えると、誠実さが伝わります。
退職理由はネガティブにならず、「次の挑戦」「キャリアアップ」など前向きに伝える
退職理由を伝えるときに重要なのは、決してネガティブな内容にしないことです。「会社の方針が合わなかった」「上司と合わなかった」といった理由は、本音であっても避けた方が無難です。
代わりに、「新しい分野にチャレンジしたい」「キャリアの幅を広げたい」など、前向きな理由に言い換えることで、円満に話を進めることができます。
特にボーナス後の退職は周囲からの目が厳しくなりやすい時期なので、誤解を与えない伝え方が大切です。前向きな理由であれば、上司も「仕方ないな」と納得してくれるでしょう。
転職活動中であることを社内にむやみに話さないようにする
転職活動をしていることを同僚に軽く話してしまう人もいますが、これは避けた方がよい行動です。噂が広まると、上司や人事に誤解を与えたり、チームの士気を下げてしまう可能性があります。
特にボーナス支給前の時期は、会社が社員の在籍状況に敏感になっています。転職の話題が漏れると、「もしかしてボーナスをもらって辞めるのでは?」と勘ぐられることも。
転職が確定し、退職日が正式に決まるまでは、なるべく周囲には話さないようにしましょう。信頼できる一部の人にだけ伝える程度にとどめるのが賢明です。
上司や同僚に悪い印象を与えないためのコツ
ボーナスをもらって辞める場合、最も気になるのは「どうすれば印象を悪くしないか」ではないでしょうか。ここでは、職場に良い印象を残すための3つの具体的なコツを紹介します。
自分が抜けた後のフォローや引き継ぎ資料を用意しておく
退職時に「引き継ぎがしっかりしている人」という印象を残すことは非常に大切です。業務内容を整理し、誰でも理解できるようにまとめた引き継ぎ資料を用意しておくと、会社側からの信頼が高まります。
また、口頭での説明だけでなく、ドキュメントやファイルを共有しておくと、後任者が安心して業務を進められます。特に担当案件の進捗状況や取引先との連絡ポイントなどは、細かく記録しておくと喜ばれるでしょう。
「最後まで責任をもってやりきった人」という印象を残せれば、辞めた後もあなたの評価は下がりません。
退職の挨拶はきちんとタイミングを考えて行う
退職の挨拶は、タイミングと内容が重要です。早すぎると周囲が動揺してしまい、遅すぎると「なんで今さら?」と思われることもあります。理想は、退職日が近づいた段階で、直属の上司→チームメンバー→関係部署→社外関係者の順に伝えることです。
挨拶の内容も形式的になりすぎず、これまでお世話になった感謝の気持ちをしっかり言葉にすることが大切です。メールで済ませず、できる限り対面で伝える方が誠意が伝わります。
退職の最後の日には、全体向けのメッセージを送りましょう。長すぎず、感謝の一言と次のステップへの意気込みを添えると、前向きな印象で締めくくれます。
感謝の気持ちを言葉にして伝える
どんなに職場に不満があったとしても、最後は「ありがとう」で終えることが大切です。特に上司や同僚、後輩などに直接感謝の言葉を伝えることで、良い印象が強く残ります。
「今まで本当にお世話になりました」「この経験を次の職場でも活かします」といった一言があるだけで、相手の受け取り方が大きく変わります。
人は、最後の印象でその人の印象全体を判断する傾向があります。たとえボーナスをもらって辞めたとしても、最後に誠実な態度を見せれば、「あの人はしっかりしていたな」と記憶に残るのです。
まとめ|ボーナスをもらって辞めると印象が悪い?円満退職のコツ
ボーナスをもらって辞めることは、法律的にはまったく問題のない行為です。しかし、会社や上司の立場から見ると、支給直後の退職は印象が悪く映ることもあります。
そのため、退職のタイミングや伝え方には十分な配慮が必要です。支給日在籍要件を確認し、ボーナスを受け取ったあとでも誠実に引き継ぎを行うことで、円満に退職することが可能です。
特に大切なのは、「最後まで責任を持って行動する姿勢」と「感謝の気持ちを言葉にすること」。この2つを意識するだけで、あなたの印象は格段に良くなります。
ボーナス後に退職するのは、非常識ではなく“タイミングと伝え方の問題”です。 しっかりと準備し、誠実な態度で臨めば、あなたのキャリアにとってプラスになるはずです。
これまでの経験を糧にして、次のステージでも自信を持って活躍していきましょう。