初めて営業職に挑戦する人の多くが、「営業会社は厳しい」と感じるものです。ノルマや数字のプレッシャー、断られることの多さ、そしてスピード感のある環境。どれも慣れるまでに時間がかかるポイントでしょう。
この記事では、初めて営業会社に入る人が直面しやすい現実や、厳しい環境を乗り越えるための心構え、そして日々のメンタルケアの方法を詳しく解説します。営業初心者が前向きに仕事を続けられるよう、実践的なヒントをまとめました。
営業会社はなぜ「厳しい」と言われるのか
営業会社が厳しいと感じられるのは、結果を求められる環境とスピード感にあります。ここでは、その理由を具体的に見ていきましょう。
ノルマや目標がはっきりしていて毎月プレッシャーがあるから
営業職には必ずと言っていいほど「数字での目標」が設定されています。これは会社が利益を生み出すために必要な指標であり、営業担当者一人ひとりに求められる成果です。
そのため、毎月の目標達成に向けて行動を管理する必要があります。達成できないと焦りを感じたり、上司からの指導を受けることもあるでしょう。
しかし、プレッシャーを感じるということは、それだけ自分が挑戦している証拠でもあります。数字に追われる感覚を「成長のチャンス」と捉えられるかどうかが、営業で長く活躍できるかの分かれ道です。
断られることが多く気持ちの切り替えが必要だから
営業の現場では、どんなに準備をしても「断られること」は避けられません。10件訪問して1件契約できれば良い、という世界です。
最初のうちは断られるたびに落ち込むかもしれませんが、「断られるのが普通」と考えられるようになると、気持ちが楽になります。
重要なのは、「なぜ断られたのか」を冷静に振り返ること。相手の課題やタイミング、提案内容のズレなど、原因を見つければ次の商談に生かせます。
結果で評価されやすく数字が常に見られるから
営業職は成果主義の色が濃い職種です。どれだけ頑張っても、契約や売上という「数字」で評価される傾向があります。
このため、「頑張っているのに評価されない」と感じることもあるかもしれません。けれど、数字で評価されるというのは、裏を返せば自分の努力が明確に可視化される仕事でもあります。
一度結果を出せば、上司や同僚の信頼を一気に得ることができるのも営業の特徴です。努力が報われる瞬間を味わえるのが、この仕事の大きな魅力と言えるでしょう。
変化が速くやり方のアップデートが求められるから
営業の世界はトレンドの移り変わりが激しく、時代に合わせたアプローチが常に求められます。例えば、かつては飛び込み営業や電話営業が主流でしたが、今ではSNSやオンライン商談を活用するスタイルも一般的になっています。
つまり、同じやり方を続けているだけでは成果が出にくいのです。新しいツールや情報を積極的に取り入れる柔軟さが必要不可欠です。
変化に対応できる人ほど、営業職では成功しやすい傾向があります。逆に「昔のやり方に固執する人」は成長の機会を逃してしまうことも。
初めて営業職に就く人が感じやすい壁とは
営業の仕事を始めたばかりの人が最初につまずきやすいのは、「何をどう動けばいいのか分からない」という点です。経験が少ないうちは、見込み客との関係づくりや提案の仕方など、すべてが手探りになりがちです。ここでは新人がぶつかりやすい代表的な壁を見ていきましょう。
見込み客の見つけ方が分からず動けなくなる
営業活動の第一歩は、商品やサービスに興味を持ってくれそうな「見込み客」を見つけることです。しかし、最初のうちはどこから探せば良いのか、何を基準にリストを作るべきかが分からず、手が止まってしまう人が少なくありません。
そんな時は、まずは身近なネットワークから小さく始めるのがコツです。既存の顧客リストや、紹介、展示会、SNSなど、行動を起こすほど新しい接点が増えていきます。
大切なのは「動きながら学ぶ」こと。完璧な準備を求めすぎるより、まずは10件でも行動してみることで、次に何を改善すべきかが見えてきます。
初対面で信頼関係をつくるコツが分からない
営業の基本は信頼関係の構築にあります。ですが、初対面の相手に対して信頼を得るのは簡単ではありません。新人のうちは特に緊張してしまい、会話がぎこちなくなったり、自分をうまくアピールできなかったりします。
信頼関係を築くには、まず「相手を知る姿勢」を持つことが重要です。自分の話を一方的にするのではなく、相手の課題や興味を丁寧に聞き出すことで、自然と距離が縮まります。
また、身だしなみや表情、姿勢といった「第一印象」も信頼を左右します。清潔感のある服装や丁寧な言葉遣いを心がけることで、相手に安心感を与えることができます。
ヒアリングやクロージングで言葉に詰まってしまう
商談の中で最も緊張する場面が、ヒアリングやクロージングの瞬間です。質問の仕方や提案の言葉がうまく出てこず、沈黙してしまうこともあるでしょう。
こうした場面を克服するには、「質問の型」をあらかじめ準備しておくことが有効です。たとえば「現在の課題はどんな点ですか？」や「理想の状態はどうなっていると良いですか？」など、相手の課題を自然に引き出す質問を3〜5個用意しておくと安心です。
また、クロージングの際には「契約してください」ではなく、「ここまでのお話をまとめると、〇〇のような提案でよろしいですか？」と確認する言い回しを使うことで、相手も受け入れやすくなります。
断られた後に気持ちを立て直せない
営業では、断られることが日常です。しかし、最初のうちは断られるたびに「自分が否定された」と感じてしまい、落ち込む人が多くいます。
断られるのはあなたの人間性ではなく、提案内容やタイミングが合わなかっただけ。そう考えられるようになると、少しずつ気持ちが軽くなります。
重要なのは「断られた後にどう立ち直るか」です。断られた理由を簡単にメモし、次の提案に活かす。これを繰り返すことで、経験値がどんどん積み重なります。
また、気持ちが沈んだ時は一人で抱え込まず、同僚や先輩に話すことも大切です。誰もが同じ経験をしていると知るだけで、心が軽くなるものです。
厳しい営業職を乗り越えるための心構え
営業で長く活躍するためには、考え方や心の持ち方が非常に重要です。厳しい環境の中でも前向きに動き続けるためのマインドセットを身につけましょう。
失敗は学びだと考え次の行動をすぐ決める
営業で成功している人ほど、失敗を恐れません。なぜなら、失敗の裏には必ず学びがあることを知っているからです。
大切なのは「なぜ失敗したのか」を分析し、次にどう活かすかを考えること。たとえば、「提案資料の説明が難しかった」と感じたなら、次は図を増やしてわかりやすくする、といった改善が可能です。
行動→振り返り→改善のサイクルを回すことが、営業力を磨く最短ルートです。落ち込むよりも、行動を止めないことに意識を向けましょう。
小さな目標を毎日クリアして自信を積み上げる
営業では成果が出るまで時間がかかることも多く、途中でモチベーションが下がることがあります。そんな時に効果的なのが「小さな目標設定」です。
たとえば「今日は3件アポを取る」「10分早く出社する」といった、達成可能な目標を毎日設定します。これを積み重ねることで、「できた」という成功体験が増え、自信へとつながります。
自信は結果からではなく、日々の積み重ねから生まれるということを忘れないでください。小さな成功ほど、後々大きな成果の土台になります。
前向きな言葉を使い自分を励ます習慣を持つ
営業の仕事は、日々の結果やお客様の反応によって気持ちが左右されやすい職種です。そんな中でメンタルを保つためには、自分にかける言葉を前向きにする習慣がとても大切です。
たとえば、商談がうまくいかなかったときに「自分はダメだ」と言う代わりに、「次はもっと良くできる」と言い換えてみましょう。言葉を変えるだけで、脳の受け取り方が前向きになり、自然と行動意欲も高まります。
また、毎朝鏡の前で「今日も挑戦できることに感謝しよう」と声に出すなど、自分を励ますルーティンを取り入れるのもおすすめです。自分が自分の一番の味方になるという意識を持つことで、厳しい状況でも心が折れにくくなります。
仲間や先輩に助けを求めチームで解決する
営業というと「個人プレー」のイメージが強いかもしれませんが、実際にはチームの力が非常に重要です。分からないことや悩みを一人で抱え込むと、モチベーションが下がりやすくなります。
勇気を持って周囲に助けを求めることが、成長を加速させる第一歩です。先輩や上司に相談することで、過去の経験から得た具体的なアドバイスをもらえることも多いでしょう。
また、他の営業メンバーの成功事例を共有し合うことで、自分の営業スタイルのヒントが得られます。最近では社内チャットやZoomを活用して、リアルタイムに意見交換をする会社も増えています。
営業でメンタルを保つためのコツ
どれだけ経験を積んでも、営業の仕事には常にプレッシャーがつきものです。成果を出し続けるためには、心と体のバランスを整える工夫が欠かせません。ここでは、日常で実践できるメンタルケアのコツを紹介します。
小さな成功をメモして自分をほめる
営業の成果は、すぐに数字に表れないこともあります。そんな時にモチベーションを維持するために有効なのが、「小さな成功メモ」です。
たとえば、「初めて笑顔で雑談できた」「お客様にお礼を言われた」「断られても落ち込まず次に切り替えられた」など、どんなに小さなことでも構いません。
成功体験をメモに残すことで、自分の成長を“見える化”できるのです。これを続けると、少しずつ自信が積み上がり、厳しい状況でも前向きな気持ちを保ちやすくなります。
睡眠・運動・食事のリズムを整える
精神的に安定した状態を保つには、生活リズムを整えることが基本です。特に営業職は外回りや残業が多く、つい生活が不規則になりがちです。
睡眠・運動・食事の3つを意識的に整えるだけで、集中力やストレス耐性が格段に上がります。
- 睡眠：最低6時間以上を確保し、寝る直前のスマホ使用を控える。
- 運動：1日15分のウォーキングでもOK。血流を良くすると脳がリセットされます。
- 食事：朝食を抜かず、エネルギー源になる炭水化物とタンパク質をしっかり取る。
体が整うと、気持ちも前向きに。どんなに忙しくても、健康を優先する意識を持ちたいものです。
信頼できる相談先を用意する（こころの耳・産業保健総合支援センター・いのちの電話）
営業職はメンタルをすり減らしやすい仕事です。「誰にも相談できない」と感じたときは、外部の専門機関を頼ることも大切です。
厚生労働省が運営する「こころの耳」や、メンタル不調者を支援する「産業保健総合支援センター」、そして「いのちの電話」などは、匿名で相談できる信頼性の高い窓口です。
特に、営業職は自分の感情を押し殺して頑張ってしまう人が多いもの。限界を感じる前に、早めに声を上げることが大切です。
つらい日は業務を細かく区切って進める
気分が落ち込む日や、やる気が出ない日もあるでしょう。そんなときは無理をせず、タスクを細かく分けることで乗り切る方法があります。
「リストを3件更新する」「お客様に1件だけ電話する」など、小さなステップに分けると、達成感を得やすくなります。
また、1つのタスクが終わるたびに「よくやった」と自分を褒めてあげることで、モチベーションを維持できます。
上司や先輩との関わり方で意識すべきこと
営業会社で長く働くうえで、人間関係の築き方は非常に大切です。特に上司や先輩との関係は、自分の成長スピードに大きな影響を与えます。ここでは、職場の人との関わり方で意識すべきポイントを解説します。
報告・連絡・相談を早く具体的に伝える
営業現場では「報・連・相（ほうれんそう）」が何より重要です。成果やトラブル、進捗などを上司にすぐ報告することで、チームとしての動きがスムーズになります。
報告が遅れると、上司が判断できず、チャンスを逃すこともあります。特に数字に関わる話題や顧客トラブルは、早めの共有が基本です。
「早く、正確に、具体的に」伝えることを意識するだけで、信頼関係が格段に強まります。
また、成功した事例も積極的に共有しましょう。チーム全体の士気を高めるきっかけになります。
フィードバックはメモしその日のうちに直す
営業をしていると、上司や先輩からさまざまなフィードバックを受ける機会があります。その内容はときに厳しく聞こえることもありますが、実はそれこそが最短で成長するためのヒントです。
大切なのは、もらった指摘を「感情」ではなく「改善の材料」として受け取る姿勢です。たとえば「説明が長すぎる」と言われた場合、「どうすれば短く分かりやすく話せるか」をすぐに考えましょう。
また、口頭でのアドバイスはすぐに忘れがちなので、ノートやスマホにメモを取り、その日のうちに1つでも改善を実行することがポイントです。早く行動に移すほど、定着しやすくなります。
先輩の商談を同行や録画で学ぶ（Zoomの録画機能など）
営業のスキルは、座学よりも現場での「生の経験」から学ぶことが多いです。そのため、先輩の商談をできるだけ多く観察することが、自分の成長を加速させる近道です。
同行営業の際には、先輩がどんなタイミングで質問を入れ、どんな表情で相手の話を聞いているかを意識的に観察してみましょう。細かい仕草や間の取り方など、書籍では学べないリアルなスキルが見えてきます。
最近ではZoomなどのオンライン商談を録画して、後から見返す企業も増えています。自分や先輩の商談を客観的に分析することで、改善点が明確になります。
分からないことは自分から聞きにいく
新人営業がやってしまいがちな失敗が、「分からないことをそのまま放置する」ことです。報告のタイミングや提案資料の作り方など、小さな疑問を放置すると後で大きなミスにつながります。
「質問する＝迷惑をかける」と思わないことが大切です。むしろ、早い段階で疑問を解消する姿勢は、上司や先輩から高く評価されます。
質問のコツは、「自分なりに考えた上で尋ねる」こと。「この部分をこう理解しているのですが、正しいでしょうか？」と伝えると、主体性のある印象を与えられます。
まとめ｜初めての営業会社で厳しい職場を生き抜くための心得
営業会社は、確かに厳しい環境です。目標達成のプレッシャー、断られることの連続、そしてスピードの速い変化。どれも簡単なものではありません。
しかし、その厳しさの中には、他の職種では得られない「人としての成長」や「成果が見える喜び」があります。努力がそのまま数字として表れる営業職は、自分の可能性を試す絶好の舞台です。
厳しい環境を乗り越えるためには、次のような心得を忘れないようにしましょう。
- 失敗を恐れず、行動を続けること。
- 小さな目標を積み重ね、自信を育てること。
- 前向きな言葉で自分を励まし、メンタルを整えること。
- チームで助け合い、学び合う姿勢を持つこと。
- 上司や先輩のアドバイスを素直に受け止め、即行動に移すこと。
これらを意識すれば、どんなに厳しい営業会社でも、必ず自分の居場所を見つけることができます。営業は「結果がすべて」と思われがちですが、実は「人としての信頼」が最も大切な仕事です。
あなたの誠実な努力は、必ずお客様やチームに伝わります。焦らず、自分のペースで成長を積み重ねていきましょう。やがて、かつて厳しく感じていた職場が、あなたの力を最大限に伸ばしてくれる環境へと変わっていくはずです。